日比谷シャンテにて鑑賞
予告編で面白そうだった本作を観に有楽町へ。
日曜最終回で6割程度の入り。
年齢層は20代~60代位まで幅広く入ってた。
シャンテではスリー・ビルボードとデトロイトと嘘を愛する女を上映中。
何となく映画館の方向性が見えるのは良い。
間違いなくタイムリーな今見るべき映画
なんとなく感想を箇条書きにしていきます。
- ストーリー展開が秀逸
予測不能なストーリー運びでジェットコースターに乗ったような感覚に。
あっちこっちに感情を持って行かれるので、置き場に困る。
今までの既成概念を持ってしてかかると、いい意味で裏切られるので脳細胞に刺激になってた…気がする。
この登場人物はこんな人、あの登場人物はあんなパターンの人、なんてレッテル張りは通用しない。
それぞれの光と影をきちんと描いてるから骨太な仕上がりに。
絶対的にいい人、絶対的に悪い人なんていないからね。
ダークナイトがヒットしたのもそこを描いたのを思い出した。 - 今、見るべき映画
『最近は不寛容になった』なんて声を聞きます。
トランプ政権誕生や、イギリスのEU離脱しかり内向きになってる世界情勢を鑑みると特にそう思うのでしょう。
でも昔より不寛容になったなんてことは決してなく、間違いなく寛容にはなってます。
寛容になってるからこそ今まで見て見ぬふり、もしくは地下に潜んで顕在化してなかった種々の問題が浮き彫りになっただけの話。
LGBTの問題しかり、女性の社会進出の問題しかり。はたまたMe Tooの問題しかり。
昔は不寛容だからこんな話も話題には出来ません。本作では『いかに人間は寛容になれるか?』がテーマにもなってます。謎解きミステリーを主目的で観に行くと最後肩透かし感を喰らって不満足の表明をされる方もいるでしょう。
生きづらさを抱えた現代人にとっても色々なことを考えさせてくれる&示唆してくれる映画。
登場人物にも差別主義者、小人症、黒人署長等出演し、よりその辺を明確にしてくれてます。 - 館内に響く『小便言ってくらぁ』
俺の席の左は60代位の老夫婦。
じじいは特に耳が悪いのか声がでかい。
映画中盤、主人公の心の葛藤を描く大事なシーン。
そこで小便を我慢出来なくなったじじいが奥さんに向かって放った一言が冒頭の一コマ。
間違いなく映画館の温度がすうっと下がった気がした。
もう紙オムツ買ってやるから声を出さずに黙って見とけよ。
このじじい、映画終わった時も『なんだ、これ、良くわかんなかったなあ…』と残して帰られました。
分かりやすいジオストームでも観とけ。 - スリービルボード=看板の裏側のショットが印象的
娘が殺されたけど7ヶ月たっても解決しないことに苛立ちを覚えた主人公が、世間の注目を集めるために立てた3枚の看板。
3人の登場人物を象徴してもいるのですがやたらと看板の裏側からのショットが気になった。
当然意図的に撮ってるんだろうけど人間の表と裏を表している感じ。
特に後半になるにつれ裏側ショットが多くなってた(気がする)のも、断片的な側面しかみないで全体をみろという監督のお達しか。
実際主人公も段々と『赦し』のシーンが多くなってくるし。 - 北野映画を彷彿とさせる
所々暴力的なシーンがありますが北野映画で見たような感じが。
歯医者のシーン@アウトレイジとか。
ちなみにこの映画、ジャンルが『ドラマ/サスペンス/コメディ』(オールラインシネマより)とあるんですが、暴力と笑いは背中合わせだっていうたけし映画を地で行ってます。
※調べたら監督はたけしのファンなんですね。納得。パクリじゃなくてリスペクトですね。 - 印象的なオレンジジュース
赦しがテーマにもなってるんですが、広告屋が元警官を赦すシーンも印象的。
あざといといえばあざといけど映画的にはあのシーンは良かった。
蛇足との紙一重と言えば紙一重ですが。
全体的に登場人物があっさり相手を赦すのが『?』なところもあるが2時間の尺で納めるにはしょうがないか。
主役3人の背景をきちんと丁寧に描いてるから成せる技。まあ赦す。 - 主人公3人の名演
これはもうフランシス・マクドーマンド&ウディ・ハレルソン&サム・ロックウェルの名演があってこその本作。
ちなみにウディの父親は家出した後に殺人犯に。なかなかの人生経験者。
明と暗を使い分けないといけないから役者冥利につきそうだね。
3人ともアカデミーノミネートされてるけど、サムロックウェルは助演男優賞取りそう。
3人の表情のアップをつなげた動画でご飯3杯はいけそうだわ。 - 世界の警察=アメリカの失墜と再生への希望
出てくる警察署は犯人は捕まえられないわ、差別的な警官はいるわ、主人公に火炎瓶で燃やされるわで散々なんですな。
警察の失墜=アメリカの失墜をすぐにイメージしやすいわけでこの辺は分かりやすい。
ただ、何となく良心的な黒人署長が来たり、元警官のいい方向への変貌があったりと再生を願ってる感じもどこか温かみを感じさせる。
それを作ってるのがアメリカ人では無くイギリス人のマーティン・マクドナーってのもなんか面白い。 - 評価は…
☆×5(5点満点)常々いい映画は心をカイジばりにざわつかせてくれる映画だと思っているので、本作は間違いなくざわついたね。
良作。