公開初日、朝8時50分の回に有休取得して観に行ってきたネタばれ感想
アカデミー賞最有力候補、ノマドランドを有給取って観に行ってきました。
公開1週前の週刊文春の映画批評コーナーで★5つが結構並んでいたので、その時から心を決めていた次第。
それと主役の女優、フランシス・マクドーマンドのスリービルボードも映画館で観たけど大好物な作品だったのでその期待値も込みで。
俳優の名前だけで『よし、内容は分からんけどとりあえず観に行こう!』って思える数少ない女優さん。
ちなみに他にはフィリップシーモアホフマンとかジョージクルーニーとかドニー・イェンもそんな感じ。
あと、スティーブンセガールも…はいっ、そこ失笑しないっ!
テレ東で放映されてるセガール映画は全部録画して観てますからネタじゃないですよ 😈
本作は2017年出版の『ノマド 漂流する高齢労働者たち』というノンフィクションの本が原作。
ノマドって言葉はこの1~2年で知ったけど、本作で出てくるノマドウォーカーは都会では無く広大なアメリカを季節ごとに点々と職を求め彷徨う遊牧民のような存在らしい。
なかなか興味深そうな題材なのでこれは快作の予感!
公開初日有楽町のトーホーシネマズで気合の8:50スタート鑑賞。
普段会社行くより早く起きたよ。
それにしてもいつもトーホーシネマズの予告編案内人でしか見ない山崎紘菜が、モンスターハンターに出演するのにはなんとも感慨深かったなあ…やっと映画を紹介する側からされる側になったかと…
ということで館内6割程度の入りの中、鑑賞スタート。
①映画館で見るべき理由
単純に家でこの映画を観たら…
寝ます!
ノマドランド映像綺麗だし凄い観たいけど確実に寝るなあこれ
— 妄想 (@km_jii) March 24, 2021
2021年76本目「ノマドランド」鑑賞
話の運びのテンポがめちゃくちゃ良くてこれはいける!…と思ったんですけどなんか子守唄聞かされてるような感覚に陥って2~3回意識ぶっ飛びました…Amazonってあんな雇用形態なんだ… pic.twitter.com/hLEx5G2MkK— 空翔ぶギロチン (@moviekoala) March 26, 2021
でも決してつまらないわけじゃないんですよ。
物語は決して起伏がある訳でもなく、ある程度予想通りに進んでいきます。
なおかつ広大なアメリカ大自然がヒーリング効果になるので家で寝そべりながら鑑賞したら寝落ちします。
どちらかというと本作はフランシス・マクドーマンドの生き方(あくまでも役の上の生き方ですが、これを見たら現実の生き方に見えてしまうほど溶け込んでいます)を通じ、鑑賞者自身の人生について自分と対話する映画なので家でスマホとかいじりながら観たらそれができずもったいないです。
映画館で集中して感慨にふけるべき一作ですのでぜひ劇場でご覧ください。
②アマゾンが収益をあげている理由が垣間見れる
主人公はアマゾンの繁忙期に巨大配送センターみたいな場所で季節労働するわけですが、その場所が土地代のかからなさそうな田舎のだだっ広い所なんですよね。
で、そこに恐らく低賃金な季節労働者を集めて作業させているという。
その間、駐車場をタダで貸して、ほとんど皆さん車中で寝泊り状態。
今日のNYTに載ってたアマゾン全面広告。連邦最低賃金を$15にと訴えている(テキサスの最低賃金は連邦と同じ$7.25)。一方でアマゾン配送センターの劣悪な労働環境は有名。何を意図している? pic.twitter.com/bD53xqmJG9
— Shinya Wakao (@swakao) February 22, 2021
こんな話は昔から聞いていたのでなるほどなあと思いながら…
経済的に二極化した世界から脱却して自由を手に入れているはずのノマド達が、その巨大化している象徴であるアマゾンの一端で低賃金で働くというなんとも言えない社会の縮図。
それでも定期的に働ける場所を提供している分まだマシと捉えるべきか…
③道の駅で車中泊をして生活している日本の高齢者の姿を思い出す
決してアメリカだけの話じゃないんだよなあ…
もちろんノマド生活の規模は異なるけど日本での貧困高齢者の問題にも通じるわけで。
職場の休憩所で、車中泊生活者の
ドキュメンタリーの番組を見た…
若者から高齢者まで、全国に渡って
結構多くいるんやな…
家を失うと路上生活はもちろん、ネカフェでも車でも
厳しい生活が続く…
これから、かなりの数に増えていくだろう…
まぁ住む家があっても、悲惨な暮らしの人も多いが… pic.twitter.com/dODbHUYwVZ
— ☆リポゾー(^o^)/@健康第一・長期積立・分散投資して、資産と髪を増やしていく兼業投資家🏦 (@Ripozo777) February 19, 2020
老後をのんびりキャンピングカーでアメリカや日本を周遊する…っていう車中生活ならいいけど決してそうじゃなく、家賃払えない&年金少ないからそうせざるを得ないって話だし。
役所に申請することも思いつかない人が餓死しているケースも現実にあるしねぇ。
今後車中生活者が増えても駐車場で車中泊させてもらえず困るケース、もっと増えていくんですかね…
④『ハウスレスだけどホームレスじゃない』と言うパンチライン
主人公のセリフで
『ホームレス』じゃない、『ハウスレス』だ
というセリフが出てきます。
ほとんど一緒じゃねーか!
って傍から見ると思いますが、当人たちからすると違うようです。
ホームレスには2種類いる。
■ルーフレス
野宿の人(公園、河川、道路、駅舎など)■ハウスレス
屋根はあるけど家がない人(ネカフェ、サウナ、友人宅など)増えてるのがハウスレスです(俺もこっち)。ハウスレスの人口は調査対象になってない。実は全体のホームレス人口は増えている。(๑❛_❛๑) pic.twitter.com/WyA5JuMtGH
— 林田一@SNS運用代行します (@aime_hayashida) September 13, 2019
私の認識では↑こんな感じの認識だったんですけどね…ホームレスの中にハウスレスがいる括りかと…
でもこんな定義もあるようです。
「ハウスレスとホームレスは違う」とも話していた。独りにしないこと。心配してくれる人、気にかけてくれる人のいる状態をつくり出すこと。孤立化が進む状況下で「家族機能の社会化」を試みてゆくこと。
— 西村 佳哲 (@lwnish) March 1, 2021
経済的に困窮はしていても人とのつながりは持っているのがハウスレス。
もしくは心の中に家族(ホーム)との思い出を有しているのがハウスレス。
この主人公も夫をがんで亡くし、その思い出と荷物を積んで旅をしていた訳で…
決して社会とのつながりを断絶しているわけじゃないっていうプライドというか自尊心みたいなものが感じられましたけどね。
でも最後思い出の荷物を処分して心も少し軽くなった主人公が非常に印象的で、少し明るい希望を灯してくれるラストが余韻を残します。
でもこれから空き家問題も増えていくし、このような人たちをマッチングさせる行政の仕組みはできないですかね…過疎化した限界集落とかに安く住んでもらうようにするとか…でももうやってそうだな、そんなこと。
そういえば、このパンチラインで思い出したのが↓この動画の3:32の所。
『ホームレスだけどホープレスじゃねえ』
ご飯あげたい / 牛込寅太郎a.k.a.TIGER SHOT https://t.co/dgQQQQbEIm @YouTube
ホームレスだけどホープレスじゃねえ
— yuichi tanaka / 田中 佑一 (@0706u1) January 14, 2021
牛込寅太郎に『ハウスレスだけどホームレスじゃねえ』ってラップして欲しい 🙂
⑤どんな風に働くかというよりは何のために働くか
現代社会においてよりクローズアップされてる問いかけだよね。
働く手段はたくさんあるけど、何のために働くかを定めてないと結局同じのような。
つまりどう生きるかって話ですかね。
人事総務の立場からしても、給料だけでは無い従業員への会社としての価値提供の仕方について考えさせられもしました。
ほんと、今の時代にタイムリーに観るべき映画ですね。
アカデミー作品賞と主演女優賞はダイヤモンドより堅そうな本命作でした。
ちなみに、劇中では死んだ彼女、実際には生きているようです…良かった。
★×4.0(5点満点)